SDGsインタビュー

SDGs Interview

自分らしい生活をしたいから
生まれ変わっても農家になりたい

髙橋 一聡さん髙橋農園 代表/JA根上丸いも部会 会長

「加賀丸いも」は、能美市と小松市で栽培される地域特産のブランド山芋です。能美市大浜地区で加賀丸いもや野菜の栽培を生業とする髙橋一聡さん。この地で理想とする新しい農業のかたちと自分らしいライフスタイルの実現に向け、充実した日々を過ごしています。

のみ指標/「極める」お人柄
要素:農林業

活動目標:
故郷の土地や景観を守る農林業を
未来につないでいこう

能美市だから叶えることができた、農家への道

サラリーマン家庭で育った私は、学校卒業後に一般企業に就職しました。しかしそこに待っていたのは日常生活よりも仕事を優先しなくてはならない日々へのジレンマでした。これからの人生を考え、自分で時間の過ごし方を決める生活をしたいと、勤めていた会社を辞めて選んだのは就農の道でした。

それまで農業の経験は皆無だったことから、ひとまず白山市の農業法人で農業のノウハウを学ぶことから始め、厳しいながらも自分がイメージする生活を実現できる職業であることを確信し、自宅がある能美市大浜町での独立に踏み切りました。独立に向けてお世話になった方々の中には、加賀丸いもを生産している農家がいらっしゃって、その先輩に勧められて、私も加賀丸いもの栽培を始めることとなりました。

加賀丸いもは、1934(昭和9)年の手取川氾濫によって大量の砂が流れ込んだ土地で山芋を栽培したところ、これまでにない丸い形の山芋ができた偶然から生まれ、その後も先人たちが試行錯誤の中で栽培方法を追求してきました。畝を高くする特殊な栽培方法は手間もかかりますが、まん丸な形ともっちりとした粘り、独特の食感など、加賀丸いもならではの魅力があります。

経験不足による不安もありましたが、先輩農家の皆さんのアドバイスやサポートのおかげで毎年順調に出荷できています。これからも能美市の特産品として、加賀丸いもを守り続けていきたいと思っています。

自分が実感している幸せを他の人にも感じてほしい

加賀丸いもに加え、畑ではネギやサツマイモ、キャベツ、ピーマン、ナスなど、さまざまな野菜をつくり、直売所などに出荷しています。自然が相手ですから大変なことは数え切れないほどありますが、それでもやめようと思ったことはありません。野菜は我が子を慈しむように手をかければ、愛情に応えて元気に育ってくれますし、栽培方法や土壌のこと、農家の経営に至るまで、学ぶべきことは尽きません。

「また食べたくなる野菜をつくりたい」という理念のもと農業に取り組んでいて、直売所で自分の農場の名前が入った野菜を何度も購入してくださるお客様の存在や「おいしかったよ」の声は何よりの励みになります。私自身、農家として生きることは「持続可能な食料生産の仕組みをつくり、何が起きてもすぐに回復できるような農業を行う」というSDGsのゴールの一つにつながると思っています。

今後は次のステップとして、私が雇用主となって髙橋農園で働く方にも私同様に作業内容や出勤・退勤時間を自らが決める選択ができる職場づくりをしたいと思っています。さらに雇用面では障がい者の雇用についても取り組んでいきたいと計画しています。

これらの夢をかなえるためにはまだまだ課題はありますが、生まれ変わっても農家になりたいと思えるほど農業が好きで、まっすぐな気持ちで農業に取り組んでいけば必ず実現できると信じています。

2030年の能美市のありたい姿は?

私はゼロからのスタートでしたが、運よく周りの人に恵まれ、好きなことを仕事にできました。しかし現実にそれは稀なケースだと思います。未来の能美市には、農地の確保や雇用に対する補助など、農業人口の増加を目的とした仕組みができ、農業を志す人がチャレンジしやすい環境の整備を期待しています。

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