SDGsインタビュー

SDGs Interview

あるだけで楽しく
使って心地よいものをつくりたい

相川 志保さん九谷焼作家/伝統工芸士(九谷焼絵付部門)認定

1999(平成11)年に九谷焼技術研修所を卒業し、現在は職人工房で作陶活動を続ける相川さん。手で作り出す仕事がしたいと門をたたいた陶芸の世界で、九谷焼の新たな魅力の発信に積極的に取り組んでいます。

のみ指標/「極める」お人柄
要素:伝統工芸

活動目標:
伝統工芸を暮らしの中にもっと取り入れよう

手でつくり出す仕事がしたい、と陶芸の道へ

私は九谷陶芸村の職人工房で作陶活動を行っています。出身は金沢市ですが、工房も生活拠点も能美市に移して10年近くになります。
以前は陶芸とはまったく関係のない会社で働いていました。そこを退職することになり、次にどんな仕事に就こうかと考えたとき、思い浮かんだのは手でつくり出す仕事がしたいということでした。陶芸の道を選んだのは、祖母がお茶の先生をしていて、お茶碗が身近な存在だったからです。亡くなった祖母の喜ぶ顔が見たかったという思いもどこかにあったかもしれません。

基礎から陶芸を学ぼうと、石川県立九谷焼技術研修所に入学しました。ゼロからのスタートでしたが、充実した3年間を過ごしました。先生方の九谷焼に対する思いの深さを知り、作陶をこころざす仲間と出会えたことは、私の大切な財産です。

研修所を卒業した私は、当時は職人になりたいと思っていました。求められる技術で期間内にきちんと仕上げる仕事がしたくて、能美市内にある九谷焼関連の会社に就職しました。

そこで出会ったのが「いっちん」でした。水で溶いた粘土や釉薬を、細い筒から生クリームのように絞り出して模様をつける技法です。会社ではその技法で陶器に細い線を入れる仕事もありました。研修所で和絵具の美しさを教わっていた私は、やがてこの技法と和絵具を組み合わせて自分だけの作品をつくりたいと思いました。

能美市だから育まれた、業者さんや作陶仲間とのつながり

能美市はとても暮らしやすい町だと思います。海も山もあって景観もいい。ここで暮らすことで、陶芸村の方や問屋さん、地域の方々から声をかけてもらうなど、たくさんの人たちのおかげでここまで来ることができました。

この仕事のやりがいは、一つはお客様の喜ぶ声を聞くことです。やってよかった、がんばろうという気持ちになります。一人ではつくる数も時間も限られることを分かった上でお仕事をいただけているので、できるだけ応えていきたいと思います。

もう一つは、頭の中で思い描いていたものが、手を動かすことで思い通りの色や形になっていくときです。研修所時代に一冊の本を買い、授業で行き詰まったり、つまずいたりしたときにはいつも開いて見ていましたが、今ならその本に載っていたものの行程が理解出来るようになりました。

最近はヨーロピアンなテイストにも惹かれます。これまでは生地の白さを活かした作品が中心でしたが、今後はピンクや紺色の地に金色の線を合わせるなど、さまざまな色の線と和絵具・洋絵具を使って、より洋風な作品にもチャレンジしたいです。そこにあるだけで楽しく、使って心地よいものをこれからもつくり出していきたいと考えています。

2030年の能美市のありたい姿は?

人と人の距離が近いことが能美市の良さだと思います。なにげない挨拶もふくめ、能美市には和気あいあいとしたコミュニケーションがあります。
変わらずにそれが続いていってほしいと思います。

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