地域活動

住民自身の手でふるさとの自然を育む

高坂・根上町緑を守る会

能美市指定史跡の「根上松」をはじめとする「根上山」の松林を守るため、地元の住民たちによって2005(平成17)年に発足したのが「高坂・根上町緑を守る会」です。ボランティア団体でありながら、専門家から知識や技術を学んで、自ら松林の再生に取り組んできました。地域の小中学生にも体験学習などで自然環境を守る大切さを伝えており、伝統の松林を未来に受け継いでいく活動を続けています。


専門知識を学んで、地元の松林を守る

海岸にほど近い能美市根上町にあり、かつて源平の軍勢が争った古戦場跡がある山の上に、樹齢120年を超える1本の黒松が生えています。根っ子が地面の上まで持ち上がっていることから「根上松」と名付けられ、根上松のある山も「根上山」と呼ばれています。ほかにも黒松や赤松などの木々が集まってできた根上山の松林は、長年にわたり、地域の人々に親しまれてきました。

ところが2004(平成16)年に、その松林に害虫の松くい虫による大規模な被害が発生しました。放っておけば、すべての松が枯れてしまう恐れがあると分かったとき、根上山の周辺の住民たちが立ち上がりました。松林の土地の地主たちの許可を得て、「高坂・根上町緑を守る会(以下、守る会)」をつくり、町内会の組織の一つとして、町ぐるみで松林を保全するための活動に乗り出したのです。

まずは行政や企業、民間団体、少年団といった地域のさまざまな組織・団体の皆さんと力を合わせて、2年間をかけて、被害にあった松の撤去や運搬を進めました。樹木医や石川県林業試験場などの専門家にも協力を頼み、自分たち自身の手で松を守っていくために専門的な知識や技術を学んでいきました。残った松に害虫の予防処理を行い、被害木を撤去した跡地には1,600本の黒松の苗木を植樹して、松を再び増やそうとする取り組みを始めました。苗木の根を炭ではさんで植えると、根を張りやすく枯れにくくなることを発見し、「根上方式」と名付けて、ほかの地域の松林にもそのやり方を広めています。

さらに、雑草を刈り取ったり、地面を覆った松の葉を取り除いたり、増え過ぎた木や枝を伐採したり、捨てられたゴミを拾ったりして、松が育ちやすい環境を整え、再生のきっかけをつくりました。こうした松林の手入れは、今も定期的に続けています。松の近くに桜の木を植え、敷地内には被害木を再利用した散策路のほか、展望台やイベント広場を設けるなど、地域の人々が身近な自然と触れ合える憩いの場としても整備してきました。

そうした努力の結果、現在の根上山では松くい虫の被害はほぼなくなり、いきいきと成長する木々の下には、春のお花見や秋のどんぐり拾いなどに集まる人々の姿が見られます。「守る会」の北村共二会長は根上山の今後について、「松林を守って育てていきながら、訪れた皆さんが楽しめるように、松も人も喜ぶ場所にしていきたいですね」と夢を描いています。

地域の仲間や若い世代とともに活動

「守る会」は行政や大学、企業、地域の集まり、ボランティアなど、ほかの団体とも盛んに交流して、自然を守ったり、自然と楽しんだりする活動の輪を広げてきました。能美市の保育園や小中学校などの子どもたちを招いて、松や桜を植樹したり、原木にシイタケの菌を打ち込む体験を通して、ふるさとの自然や環境について学んでもらっています。

定期的に下草刈りをすることで、松が育ちやすい環境を整えます。

中でも根上中学校からは、2010年から生徒たちが松の落ち葉拾いなどに参加して、「守る会」の活動に協力しています。北村会長は根上中の生徒が卒業式で後輩に語った言葉を教えてくれました。「『自分たちが先輩から受け継いでお世話してきた松林をこれからもよろしく頼みます』と言ってくれたそうなんです。それを聞いて、思わず涙が出ましたよ」。若い世代に環境を守ることの大切さが伝わっていることを励みにしながら、「守る会」は松林をもっと自然豊かな場所にするための活動をこれからも続けていきます。

《お話をうかがった方》北村共二さん(高坂・根上町緑を守る会会長)中村正信さん(高坂・根上町緑を守る会)

関連するSDGsゴール

企業・団体情報

名 称 高坂・根上町緑を守る会
活動紹介 能美市史跡「根上松」をはじめとする「根上山」の松林の保全に取り組み、様々な団体と協働して松林再生の活動(植樹・清掃などの市民活動)を行っています。
住 所 〒929-0116 能美市根上町乙38-7

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