お知らせ
SDGsをテーマにしたアート作品の制作に取り組む「Art Project for SDGs」。今年度は能美市内の3つの中学校の生徒たちが協力して、能美市の伝統工芸である九谷焼の陶片を材料に、九谷焼の持つさまざまな色や模様、絵柄などを活かした作品づくりに挑戦します。夏休み期間から各学校で始まった制作の様子をお知らせします。
地震で壊れた九谷焼を中学生がアートに再生
2024年の元日に石川県を襲った巨大地震は能美市にも被害を及ぼしました。市内にある九谷焼の店舗や工房では、数多くの商品や作品が倒れたり棚から落ちたりして壊れ、多大な損害に見舞われました。古いものから新しいものまで、多彩で色鮮やかな九谷焼の品々がバラバラの陶器の破片に変わってしまいました。
本来ならそのまま捨ててしまわざるを得ない陶片に対して、能美市では被災した九谷焼業者の皆さん*の協力のもと、それらを回収して「Art Project for SDGs」で活用することを決めました。このプロジェクトは、市内の中学生がアート作品づくりを通じてSDGsの大切さを知り、作品の鑑賞者も含めて、SDGsを自分ごととして考えるきっかけにすることを目的としています。
昨年度は海岸に流れ着いた海洋ゴミを使ったアートに取り組みましたが、今年度は九谷焼の陶片を素材にすることで、地域が育んできた文化の素晴らしさと地震からの復興にも目を向けながら、能美市の3つの中学校が協力しての作品づくりを進めます。
九谷焼と絵の具が彩るレジンアート
今回のアート制作では、生徒たち一人一人が手分けして、作品の一部となるパーツをつくっていきました。材料に使ったのは、紫外線を当てると液体から固まるUVレジンです。まずレジンを直径約4cmの円盤の形に固めて、表面にはアクリル絵の具で自由に色を塗ります。そこへ九谷焼の陶片を乗せ、さらにレジン液を注いで固めることで、陶片が中に入った色付きの円盤が完成します。
夏休みには美術部員の生徒たちが部活動で登校した時間を利用して、パーツとなる円盤づくりに取り組みました。色塗りでは、九谷五彩の色でもある赤や緑、青などに塗るだけでなく、淡い色を交えたグラデーションを施したり、複数の色を駆使して模様や絵を描いたりと、生徒ごとにさまざまな工夫を凝らしていました。
中に入れる陶片は大きさや形はもちろん、九谷焼の作風の多様さを物語るかのように、色彩も模様も絵柄も千差万別で、生徒たちも数多くの陶片の中から好みのものを探す作業を楽しんでいました。陶片選びにもそれぞれの感性が発揮され、夏の強い日差しで固められた円盤たちは、どれ一つとして同じもののない個性的な作品として仕上がっていきました。
秋に作品の展示イベントを開催
九谷焼陶片入りの円盤パーツは、夏休みから新学期にかけて3つの中学校で合わせて600個程度を制作し、その後はパーツを組み合わせて展示を行います。秋の作品展示イベントに向けて、中学生たちのセンスとアイデアが、地震で壊された九谷焼にどんな命を吹き込むか、引き続き注目していきます。
○参加した生徒から
「絵の具の塗り方はレジンの透ける感じを活かすようにしました。陶片は自分が塗った背景にマッチするものを選んで、色や模様のバランスを工夫しています」
「陶片を見ながら、『元々は何の作品だったんだろう?』と想像して、九谷焼の作者の方が意外に感じてくれるような出来上がりを目指しています」
「九谷焼にこんなにたくさんの色や絵柄の種類があることを知って驚きました。パーツは似たデザインに見えないように、それぞれ色合いを変えながらつくっています」
「組み合わせた陶片が引き立つような背景づくりを心掛けています。みんなのパーツが集まったら、ヒモで吊るしてシャンデリアみたいに飾ったところを見たいです」
「たくさんの陶片の中から、自分が興味をひかれる色や形を探す作業が思った以上に楽しいです。もっといろんな組み合わせを試していきたいと思います」
「パーツ1個ごとにテーマを決めて、それに沿った色塗りや陶片選びをしています。壊れたものから新しい作品をつくっていくことにも面白さを感じています」
*今回の制作で使用した九谷焼は、のみSDGsパートナーズに登録されている石川県陶磁器商工業協同組合の協力のもと、(有)九谷苑、(有)マルサン宮本本店、安東眉石窯などの事業者および大西勇さんからご提供いただきました。